「題詠blog2007」参加のための専用ブログです。 参加作品をUPしていきます。 (五十嵐きよみ)


by kiyomiigarashi
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99本の薔薇の花束         (五十嵐きよみ)

 001:始  (台本にないこの恋の始まりを序曲のあいだに想像しよう)

 002:晴 スリッパが晴天、雨天をそれぞれに告げて僕らのベッドのそばに オクタヴィアン

 003:屋根 屋根のない場所へあなたを連れ出して誰より好きだと公言したい オクタヴィアン

 004:限 生きている限り愛するなどというささやき 若いわかい恋人 マリー・テレーズ

 005:しあわせ 永遠を信じたふりで恋人の腕に抱かれるふふふしあわせ マリー・テレーズ

 006:使 パリジャンが好んで使う言い回しまねて達観してしまえたら マリー・テレーズ

 007:スプーン 対になる銀のスプーン会えぬ日の慰めのため分け合いましょう マリー・テレーズ

 008:種 さっきまで紅茶の種類を笑みながら教えてくれていたのに、急に オクタヴィアン

 009:週末 週末はあなたを思って過ごすこと約束してもどこかすげない オクタヴィアン

 010:握 キスをして別れたいのか握手して別れたいのか今朝のあなたは オクタヴィアン

 011:すきま 愛してる愛しているとウエハースですきまを埋める心もとなさ マリー・テレーズ

 012:赤 赤裸々の「らら」のあたりに人生のいうにいわれぬ愉しみがある 男爵オックス

 013:スポーツ 初めてのスポーツよりもぎこちない華奢なヒールの(僕の)足つき マリアンデル

 014:温 せつなくて 温水プールに放たれた人魚のように胸苦しくて ゾフィー

 015:一緒 さようなら心のままに泣けた日々ナイフと日記を一緒にしまう ゾフィー

 016:吹 ストローの袋を吹き飛ばすクセも明日にはもう直さなくては ゾフィー

 017:玉ねぎ ひたひたとやるせなくなる玉ねぎの芽ぐむ匂いは若さのにおい マリー・テレーズ

 018:酸 炭酸の気泡が消えておだやかなグラスのような週末が過ぐ マリー・テレーズ

 019:男 男声と女声のあいだで口ずさむ(僕の)わたしの今日の鼻歌 マリアンデル

 020:メトロ 写真やらパリのメトロの切符やらひそませコクトー詩集は静か マリー・テレーズ

 021:競 はつなつに白い手袋はめて行くロンシャン競馬場の華やぎ マリー・テレーズ

 022:記号 果樹園の記号をそっと書き入れる恋人と会う約束の日に マリー・テレーズ

 023:誰 幸せはごくささやかであっていい誰ともちがう私でいたい ゾフィー

 024:バランス バランスを考えながら束ねゆくスイートピーのゆたかな重み ゾフィー

 025:化 薔薇の香がほのかに漂う化粧水だいじな人にあすこそ逢える ゾフィー

 026:地図 この街の美人地図なら我輩に何はさておき任せてほしい 男爵オックス

 027:給 厳かに秘密のありかを暴き出す手つきで給仕が拾うスプーン オクタヴィアン

 028:カーテン 不意打ちのまぶしさ君の両腕がカーテンをあけ世界を開く オクタヴィアン

 029:国 いれたての紅茶の色をひきたてる中国製のカップの白さ ゾフィー

 030:いたずら ひとしきり話してお茶を注ぐときにいたずらっぽい笑顔と出会う ゾフィー

 031:雪 エンゲージリングを捨ててこの指に飾ってみたい雪の結晶 ゾフィー

 032:ニュース 何という破廉恥な恋!ニュースにはならないまでも噂になるぞ 男爵オックス

 033:太陽 太陽を味方につけているつもり?あの高飛車なものの言い方 マリアンデル

 034:配 いつどこで使えばいいかわからないハートのAが配られてくる ゾフィー

 035:昭和 歳の差はあきらか私の人生の大事はおおかた昭和にあった マリー・テレーズ

 036:湯 十代はすでに遠くてバスタブの湯を抜くときのするどい悲鳴 マリー・テレーズ

 037:片思い かけがえのない懐かしい日のあかし片思いから始まる恋は マリー・テレーズ

 038:穴 ドーナツの穴によく似たわたし(僕)存在するのに存在しない マリアンデル

 039:理想 華奢な肩ほそい指でも女性なら理想的だとはじめて気づく マリアンデル

 040:ボタン 洋服のボタンの位置の違いほど性差は単純ではないけれど マリアンデル

 041:障 小娘に高価なワインをおごるのは癪に障るが元は取れるな 男爵オックス

 042:海 この海を越えてゆけるか鳥かごの鳥でしかないこころを放つ ゾフィー

 043:ためいき 春先のあわゆきに似たためいきを恋した誰かが密やかにつく ゾフィー

 044:寺 尼寺へ行くなら裸足でたいせつな名前ひとつを胸にひそめて ゾフィー

 045:トマト まだ青いトマト(彼女)とあとはもう崩れるだけの熟したトマト マリー・テレーズ

 046:階段 オペラ座の階段おりてゆくときのささやくような衣擦れの音 マリー・テレーズ

 047:没 若くして没した詩人の享年をいくつ過ぎたか数えてはだめ マリー・テレーズ

 048:毛糸 毛糸玉ころがるようにシャボン玉あふれるように彼女は笑う オクタヴィアン

 049:約 約束を交わせたらいい「春」というボッティチェッリの絵画の前で オクタヴィアン

 050:仮面 ヴェローナの仮面舞踏会(マスカレード)で知り合った二人とはまた異なる試練 オクタヴィアン

 051:宙 宙返りしたくなるほど浮かれても財布の紐まで緩めるものか 男爵オックス

 052:あこがれ 結婚にあこがれるのは世故長けぬ若者たちのおろかな習い 男爵オックス

 053:爪 策略はめぐらせてある念入りに十指の爪をといで出かける マリアンデル

 054:電車 電車からいつも小さく見えている教会あすこそ行ってみたくて ゾフィー

 055:労 苦労して仕上げた刺繍のひとすみに鋏を入れて名をほどきゆく ゾフィー

 056:タオル 手に取ればタオルに戻る白バラがホテルの部屋の鏡の前に マリアンデル

 057:空気 おばかさん浮き輪の空気が抜け始め今に慌てるとも知らないで マリアンデル

 058:鐘 うたごえがささやきになる音量で「シチリア島の晩鐘」を聴く マリー・テレーズ

 059:ひらがな 本当に言いたいことは言えぬこと棘もつ言葉をひらがなにする マリー・テレーズ

 060:キス キスリングその絵に封じ込められた永久に無口な少女の憂い マリー・テレーズ

 061:論 気前よく奢ってそれで終わるなど論外サンタでもあるまいに 男爵オックス

 062:乾杯 レポレロのひそみに倣うカタログに間もなく加わる名に乾杯を! 男爵オックス

 063:浜 砂浜と海のさかいで揺れている人魚の髪からほどけたレース ゾフィー

 064:ピアノ ベッドでは淋しい夢しか見ないから枕を抱いてピアノの下へ ゾフィー

 065:大阪 父が語るむかし大阪球場で拾ったボールにまつわる思い出 ゾフィー

 066:切 突然の災難?いいや陰謀だ!思わぬ事態に動悸、息切れ 男爵オックス

 067:夕立 夕立に襲われたうえ竜巻に追いかけられて、何がなんやら 男爵オックス

 068:杉 滑稽な顛末2ちゃんに書き込めば「人多杉」のスレになりそう マリアンデル

 069:卒業 結婚ののちに出会った恋からはきれいに卒業するしかなくて マリー・テレーズ

 070:神 うちとけた女同士のおしゃべりの相手に不向きな自由の女神 マリー・テレーズ

 071:鉄 地下鉄の路線図のごと入り組んで色あざやかな人間模様 マリー・テレーズ

 072:リモコン リモコンと携帯電話と電卓の数字の並びはそれぞれちがう オクタヴィアン

 073:像 別れなど想像できずにいたころの花束、ワイン、千回のキス オクタヴィアン

 074:英語 たったいま終わったばかりの関係を表す時制が英語にはある オクタヴィアン

 075:鳥 風の名の事典があれば窓ぎわに鳥の事典とならべて置こう ゾフィー

 076:まぶた 幸せが遠くで待っている予感ひかりのキスをまぶたに受ける ゾフィー

 077:写真 なつかしい家族写真に母がさす白い日傘を今日はわたしが ゾフィー

 078:経 悲しみを経てきた分だけ強くなるなんてまやかし海は果てない マリー・テレーズ

 079:塔 青空は取り囲めない鉄塔がどこまで手と手をつなぎ合っても マリー・テレーズ

 080:富士 孤独だと気やすく口にすることの愚かさ富士は万年ひとり マリー・テレーズ

 081:露 南国のホテルの露台で見た月のように移ろいやすい心は マリー・テレーズ

 082:サイレン 気の毒な男爵のためサイレンを鳴らしてひたすら走る一台 オクタヴィアン

 083:筒 封筒の裏に書かれたイニシャルを見るまでもなく香りでわかる オクタヴィアン

 084:退屈 へたくそな嘘のつき方あの人は退屈しのぎに恋などしない オクタヴィアン

 085:きざし 出会いとは別れのきざし別れとは出会いの萌芽 水めぐりゆく オクタヴィアン

 086:石 最初から磁石は北を指していたはずなのに回り道をしていた ゾフィー

 087:テープ 傷テープ巻いた小指で誓い合う愛 もう何があっても平気 ゾフィー

 088:暗 あまやかにくちずさみゆく暗記したあなたの長い洗礼名を ゾフィー

 089:こころ こころよく頷くことがせめてもの誇り ひたひた淋しさがくる マリー・テレーズ

 090:質問 人生は質問ばかり答えても答えてもまた問いかけられる マリー・テレーズ

 091:命 スプーンをひとつなくしただけのこと運命などというは大げさ マリー・テレーズ

 092:ホテル 幸福なカップル不幸なカップルはどのホテルでもつねに同数 オクタヴィアン

 093:祝 裏声になるでも皮肉を滲ませるでもない祝福だからせつない オクタヴィアン

 094:社会 社会的地位というよりあの人の背筋を伸ばして生きる品格 オクタヴィアン

 095:裏 裏向きのカードの中の一枚に彼女によく似た女王がひそむ ゾフィー

 096:模様 降りそうな空模様でも構わない濡れる覚悟で駆け出せばいい ゾフィー

 097:話 まだ話し足りないけれど打ち解けて話す機会はもうないだろう オクタヴィアン

 098:ベッド 少しずつこの結論に慣れてゆく明日にはベッドカバーを替えて マリー・テレーズ

 099:茶 三重唱の余韻を静めるために飲む紅茶なら濃いアールグレイを マリー・テレーズ

 100:終 オペラでは彼女が落としたハンカチを小姓が拾いに戻り、終演 オクタヴィアン
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by kiyomiigarashi | 2007-10-05 00:06 | 100首全体